STADの研究|研究を始めた理由
私は新人の頃に、脳損傷後の言語障害のスクリーニングとして何を行えばいいのか?と、とても悩んだことがありました。 「失語症」「構音障害」等のように、既に「●●障害」と分かっている場合には、それに対する介入の理論や方法について養成校で習っていたし、教科書を調べれば、歴史的にも古からの多くの文献を探ることができました。例えば、「SLTA」「構音検査」等の検査から症状を検出し、その後必要に応じてDeep Testを施行し、治療方針を考える、といったパラダイム。 しかし、初めて最初から患者さんを任された時、プログラムを考える前提として何が必要か?まず何からとりかかれば良いのか?と悩みました。教科書によると 「言語聴覚士が行う初診時(インテーク面接)では、次回以降どのように臨床を展開するのか?といった大まかな方針を建てる」 ということですが、具体的にどのようにしたら「大まかな方針」を建てられるのかをイメージできませんでした。幾つかの言語障害スクリーニング検査の試案を見つけましたが、採点の基準が設けられていなかったり、検査結果が何点だからといってそれをどのように解釈すればよいのか?、その後に何をすれば良いのか?分からず困りました。 |
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ある程度の経験を積むと、難なくできるようになるのかもしれませんが、
新人の不器用な私にとって、初診の臨床がまず第一の関門 となっていました。
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藤谷先生に背中を押して頂けたこと
臨床経験2年目に、私は東京都新宿区にある、3次救急を有する病院に勤務しました。
補足|1次救急:家庭では処置できない症状を診察治療する
2次救急:入院や手術を要する患者を対象とし、24時間体制で手術が出来る設備を備えた病院
3次救急:生命に危険が及ぶような重症・重篤な患者への対応を担う救命救急センター
病床数800床以上でありながら、当時、リハビリ科に所属する言語聴覚士は私のみ、独り職場でした(現在はST4名)。毎日が本当にめまぐるしくて、毎日のように新患の処方があり、脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血等の脳損傷後急性期、誤嚥性肺炎急性期を中心とした、とても大勢の患者さんを担当しました。急性期病院で働いた3年の間に、延べ500症例以上を診療させて頂いたと思います。
そこでは、意識レベルが不十分であったり、開眼しているのに全く検査にのらない症例、失語症が重度でも発症直後から意識清明な症例、ごく軽度の構音障害を認めるが意思疎通に問題ない症例、等、様々な症例を経験し、初診時に診るべきポイントについて、少しずつ理解していきました。
そのような折、当時の職場の上司で、リハ医の藤谷順子先生から 「スクリーニングをテーマにして研究をしてみないか?」
と声をかけて頂き、この研究をはじめるきっかけを作って頂けました。

開発を志すインセンティヴ
因みに、スクリーニングに悩んだのは私だけではないようです。ネットで言語障害のスクリーニングを調べてみますと、ブログ等で「新人STが苦慮している」ということが散見されます。
例えば、こういうのとか↓
例えば、こういうのとか↓
初診の臨床には、多くのビギナー言語聴覚士が悩んでいる、ということが分かります。
また、後者に対して、経験者が回答しています↓
「切り貼り」ということですが、各々の言語聴覚士によって独自に用いられていては、基準が異なってしまいます。また、「一応」のものを患者さんに使うのでなく、正確に精度分析が行われているテストを用いることの方が、患者さんの利益にとってかなうのではないでしょうか?こうした現状が、当時の私を含めた多くの新人STを悩ませる一因になっているのかもしれません。
だから尚更、「シンプルで短時間に施行でき、患者さんへの負担が少なく、
それでもなお、STの初診について「そんなに悩む必要はない」とご賛同頂けない方はさようなら。ご賛同頂ける方には続きをどうぞ↓。どちらでもない方にはお時間がある時に続きをどうぞ↓