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言語障害スクリーニングテスト STAD 導入の前に知たい特徴

言語障害スクリーニングテスト(STAD)の特徴を知りたい言語聴覚士へ。 

 

  • スクリーニングは、自分なりに作ったけど、これで良いのかな... 
  • STADを導入する前に、STAD がどんなものか、もう少し知りたいな、と考えていませんか? 

 

本記事では、STADの導入による3つのメリットを解説します。

  1. 短時間で簡易にコミュニケーション機能を把握
  2. スクリーニングから予後を予測
  3. 言語機能が一目で分かる便利なツール

目次

  1. 言語障害スクリーニングテスト(STAD)の特徴とは? 
  2. STAD のメリットの例|予後予測、事例紹介

STAD開発者である荒木が解説します。STADは2018年に標準化され、インテルナ社より出版されました。配布実績3,000部突破!最新の研究成果は国際誌(Folia phoniatrica et logopaedica, 2021)に掲載されました。

 

STADを使うことで、忙しい言語聴覚士の臨床の負担を軽減します。

 

すぐに効果的なインテーク面接に繋げたい言語聴覚士は、続きを読んでください。

STAD, 言語障害スクリーニングテスト, 申請の前に知りたい検査の特徴とは?

言語障害スクリーニングテスト STAD の特徴とは?

1-1 複数の領域を同時にスクリーニングする必要性

言語聴覚士が行うインテーク面接では、複数の領域を同時にスクリーニンニグする必要があります。

脳卒中後のコミュニケーション障害の種類は、複数あるからです。 

 

  • 脳損傷後のコミュニケーションに支障を生じる代表的な障害として、失語症が挙げられます。初回発症の脳卒中のうち1/3に認められます(Laska AC. 2001)。
  • 構音障害は脳卒中の20–30%に発生します(Lawrence ES. 2001, Warlow C. 2008)。
  • その他の高次脳機能障害(以下、高次脳機能障害)も患者のコミュニケーションに影響します。注意障害、見当識障害などの高次脳機能障害を有すると、効率的な情報のやりとりに支障がでます(Coelho CA. 1996)。発症頻度は報告によって異なりますが、39%-77%です(Patel M. 2003, Nys GMS. 2005,  Riepe MW. 2004)。 

 

以上より、脳損傷後のコミュニケーション障害の種類は、失語症構音障害高次脳機能障害が挙げられます。それぞれの発生頻度は決して少なくありません。

従って、言語聴覚士が行うインテーク面接では「言語」「構音」「高次脳」の3側面の機能を、同時に捉える必要があります

1-2 STADと既存のスクリーニングテストとの違い

STADは「言語」「構音」「高次脳」を推定する、世界でも唯一の特徴のあるスクリーニングテストです。

海外では、既にいくつかの言語障害スクリーニングテストの論文が報告されています。

しかしSTADのように、複数の領域を有するものは見当たりません。 

 

世界の各スクリーニングテストをまとめます。失語症のスクリーニングは、以下が代表的です。

  • FAST (Enderby P. 1986)
  • MAST (Nakase-Thompson R. 2005)
  • LAST (Flamand-Roze 2011)

構音障害のスクリーニングには以下があります。

  • FDA (Enderby P. 2008)
  • QAD (Tanner D. 1999)

高次脳機能障害に対しては以下などがあります。

  • MMSE (Mori E. 1985)
  • TMT (Reitan RM. 1955)

しかし、既存のスクリーニングテストは、単独の領域が故の限界が指摘されることがあります。

(例えば、FAST(失語症スクリーニング)では、言語機能に問題が無いにも関わらず、左USNで生じる設問の失点(偽陽性)が疑問視されます(Al-Khawaja I. 1996))

 

 

脳損傷後のコミュニケーション障害の種類

STADは、言語聴覚士のインテーク面接に必要とされる、言語、構音、高次脳機能に対応する、世界で唯一の言語障害スクリーニングテストです。

その希少性について、2021年に国際論文(Folia phoniatrica et logopaedica)に明記されました。

1-3 STADが複数領域をスクリーニングするメリット ー予後予測ー

STADが複数の領域をスクリーニングすることで、予後予測の精度は高まります。

なぜなら、言語検査が同じ点数であっても、他の側面が、保たれるか、否か、によって予後が異なるからです。 

 ”言語聴覚リハビリテーションの初診では、 

多様な神経心理学的所見を観察しなければならない”   

と、Shipley(2008) が指摘しています。失語症や構音障害への高次脳機能障害の合併は少なくありません。

能登谷(1998)は、失語症の30%に高次脳機能障害が合併すると報告しています。

相馬(2014)は、構音障害の58%に高次脳機能障害が合併すると報告しています。 

失語症や構音障害への高次脳機能障害の合併

失語症や、構音障害の単独例に比べて高次脳機能障害を合併する例では、コミュニケーションや、ADL・IADLの予後が不利になります 

詳しくは 言語障害スクリーニングテスト(STAD)をお読みください。

次に、実際の症例を通して、STADのメリットや予後予測の方法を解説していきます。

STAD-homepage

STADのメリット|予後予測編、2症例の紹介

2-1 失語症の単独例|症例1のSTADスコア

STADの「非言語検査」が良好な症例は、予後は良好と予測できます。

なぜなら、高次脳機能が保たれ、状況判断が優れており、ADLやIADLの改善が期待できるからです。 

 

症例1の病巣はウェルニッケ野がメインです。

STAD、画像所見1
  • 脳梗塞(心原性:側頭葉~頭頂葉)
STADスコア

発症2日目に行ったSTADスコアは図の通り。

言語検査と非言語検査の乖離がポイントです。

低下する言語機能に対して、良好な非言語機能を表しています。

失語症の単独なので、予後は比較的良好であることが予測されます。

 

症例1の次回以降の診療方針を考えます。

検査計画としては、急性期を脱したらSLTAによる包括的言語検査が有効そうです。

また、非言語機能が保たれていることを確認するために、Kohs立方体や、RCPMも検討できそうです。

その他のディープテストも検討できるでしょう。

症状が教科書的なので、実習生に担当してもらうのにも良さそうな症例です。 

 

【実際の予後(転帰先)】

やはり経過は悪くありませんでした。

急性期の治療を終えると早期に自宅退院となり、STは外来にて継続となりました。


2-2 失語症に高次脳機能障害が合併する例|症例2のSTADスコア

STADの言語機能の低下に加えて、非言語検査も低下する例では、予後は不利だと予測できます。

高次脳機能障害を合併すると、状況判断が不十分となり、ADLやIADLアップの支障となるからです。 

 

症例2の病巣は、症例1とほぼ同じ部位、同じサイズのウェルニッケ野に加え、陳旧性の脳出血が反対側の前頭葉にあります。 

STAD、画像所見2

■脳梗塞+脳出血 

  • 赤:左の側頭葉-頭頂葉の心原性脳梗塞(今回) 
  • 青:右の前頭葉の陳旧性脳出血(1年前) 
STAD スコア

発症3日に行ったSTADでは、言語検査と非言語検査は両方とも低下しています。

失語症に加え、高次脳機能障害の合併が伺えるので、予後は不利だと予測できます。 

 

症例2の次回以降の診療方針を考えてみます。

言語検査と非言語の低下のため、STAD以外にできる検査は限られます。

SLTAは優先度ではないでしょう。

 

机上の訓練教材においても、適応できるものは少なそうです。

 

両側の大脳損傷であることを踏まえると、仮性球麻痺性の嚥下障害が疑われます。

急性期では経口摂取への対応が急がれるでしょうか。

 

【実際の予後(転帰先)】

急性期の治療を終えても自宅退院は困難でした。 

回復期リハビリテーション病棟へ転院となりました。 


2-3 コミュニケーション機能を把握する便利なツール

予後予測を含め、コミュニケーション機能を把握するには、STADアセスメントシートが有効です。

コミュニケーションの概要が一目で推定できるからです。 

上記では、症例1のほうが、症例2よりも予後は良好であったことを確認しました。

両者のプロフィールを見比べると、症例1の言語検査と非言語検査の乖離が分りやすいですよね。

 

STAD スコア

STADアセスメントシートは、STAD記録用紙についてきます。

STADの結果をプロットして、症例の経験を重ねていくと良いでしょう。 

まとめ

  • 言語聴覚士のインテーク面接では、失語症、構音障害、高次脳機能障害のスクリーニングが必要です。 
  • STADでは言語、構音、非言語検査の3領域が設置されています。 
  • 複数の領域をスクリーニングすることで、予後予測の精度が高まります。
  • STAD「非言語検査」が良好な症例は、予後が有利だと予測できます。
  • STADアセスメントシートはコミュニケーション機能を把握するのに便利なツールです。 

*STADはあくまで10分の短時間で行うスクリーニングです。確定診断をもたらすものではありませんので、予めご了承ください。  

 最後に、ここまで読んでいただき、本当に有難うございました。

 

STAD公式ホームページ - 言語障害スクリーニングテスト(STAD)

引用文献

  • Laska AC, Hellblom A, Murray V, Kahan T, Von Arbin M. Aphasia in acute stroke and relation to outcome. J Intern Med. 2001 May;249(5):413–22.
  • Lawrence ES, Coshall C, Dundas R, Stewart J, Rudd AG, Howard R, et al. Estimates of the prevalence of acute stroke impairments and disability in a multiethnic population. Stroke. 2001 Jun;32(6):1279–84.
  • Warlow C, van Gijn J, Dennis M, Wardlaw J, Bamford J, Hankey G, et al. Stroke: Practical management. 3rd ed. Oxford: Blackwell Publishing Inc; 2008.
  • Coelho CA, DeRuyter F, Stein M. Treatment efficacy. J Speech, Lang Hear Res. 1996 Oct;39(5).
  • Patel M, Coshall C, Rudd AG, Wolfe CD. Natural history of cognitive impairment after stroke and factors associated with its recovery. Clin Rehabil. 2003 Mar;17(2):158–66.
  • Nys GMS, Van Zandvoort MJE, De Kort PLM, Jansen BPW, Van der Worp HB, Kappelle LJ, et al. Domain-specific cognitive recovery after first-ever stroke: A follow-up study of 111 cases. J Int Neuropsychol Soc. 2005 Nov;11(7):795–806.
  • Riepe MW, Riss S, Bittner D, Huber R. Screening for cognitive impairment in patients with acute stroke. Dement Geriatr Cogn Disord. 2004;17(1–2):49–53.
  • Enderby P, Wood VA, Wade DT, Hewer RL. Aphasia after stroke: A detailed study of recovery in the first 3 months. Int Rehabil Med. 1986;8(4):162–5.
  • Nakase-Thompson R, Manning E, Sherer M, Yablon SA, Gontkovsky SLT, Vickery C. Brief assessment of severe language impairments: Initial validation of the Mississippi aphasia screening test. Brain Inj. 2005 Aug;19(9):685–91.
  • Flamand-Roze, Bruno Falissard, Emmanuel Roze, Lisa Maintigneux, Jonathan Beziz, Audrey Chacon, Claire Join-Lambert, David Adams, Christian Denier. Validation of a new language screening tool for patients with acute stroke: the Language Screening Test (LAST). Stroke. 2011 May;42(5):1224-9
  • Tanner D. & Culbertson W. (1999). Quick Assessment for Dysarthria. California CA: Academic Communication Associates: Oceanside, CA. 
  • Enderby P. & Palmer R. (2008). Frenchay Dysarthria Assessment (2). Austin, TX: Pro-ed Inc. 
  • Mori E, Mitani Y, Yamadori A. Usefulness of a Japanese version of the Mini-Mental State Test in neurological patients (in Japanese). Jpn J Neuropsychol. 1985;1:82–90.
  • Reitan RM. The relation of the Trail Making Test to organic brain damage. J Consult Psychol. 1955 Oct;19(5):393–394.
  • Al-Khawaja I, Wade DT, Collin CF. Bedside screening for aphasia: A comparison of two methods. J Neurol. 1996 Feb;243(2):201–4.
  • Shipley, K. G. & McAfee, J. G. (2008). Assessment of neurologically based communicative disorders. Assessment in Speech-Language Pathology: A Resource Manual (p.407). New York (NY): Delmar Pub.

 

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主な履歴

AOA学会(マカオ)発表 2019年10月

■千葉大学大学院(博士課程)修了 2018年3月

インテルナ出版社より発売開始 2018年6月

■STADセミナー全国開催 2016年6月

 東京:6月26日

 熊本:6月19日 被災地支援セミナー 

 大阪:6月12日

■STADセミナーⅡ開催 2016年3月、東京

■STADセミナー開催 2016年2月21日、東京国際フォーラム

■STADセミナー開催 2016年10月25日、東京

■第18回認知神経心理研究会発表「A study of the ScreeningTest for Aphasia and Dysarthria(STAD)2015年8月8日

「未来の言語聴覚士へ」母校のニュースレター執筆 2015年6月7日

千葉大学大学院(修士課程)修了 2015年3月25日

ASHA学会(フロリダ)発表 2014年11月22日

■第17回認知神経心理研究会発表(岡山)2014年8月24日 

■第21回脳機能とリハビリテーション研究会学術集会「優秀発表賞受賞」2014年4月20日

■STADホームページ開設 2013年3月10日