質問を頂きました。
そう言えば、言語障害スクリーニングテスト(STAD)の利用について、急性期・慢性期については書籍に記しましたが、回復期については触ていませんでした。
STADが回復期でも利用できるのか?気になるところですよね。
結論から言いますと、STADは、回復期でも有効です。
本記事では、下記の内容を解説します。
【目次】
- 『回復期』でもSTADが使えるか?【回復期のSTADの利用例】
- 『回復期』STADの口コミやレビュー
- 1人目/8人 Nicoさん
- 2人目/8人 kiki@STさん
- 3人目/8人 BlackSandさん
- 4人目/8人 井上さん
- 5人目/8人 小島さん
- 6人目/8人 田中さん
- 7人目/8人 言語聴覚士たあ/リハアプリ紹介中さん
- 8人目/8人 Mt ysoさん
このブログは、STAD開発者の荒木(医学博士)が解説します。
・受賞歴 2回(第2回言語聴覚士優秀論文賞、第21回脳機能とリハビリテーション研究会優秀発表賞)
・原著論文(英語、筆頭)1編
・原著論文(日本語、筆頭)3編
・書籍出版 言語障害スクリーニングテスト
・STAD配布累計3000部突破!
1.『回復期』でもSTADが使えるか?【回復期のSTADの利用例】
回復期でも問題なくSTADは使えます。STADはスクリーニングという性質上、どの施設、どの時期でも、患者負担なく行えるからです。
回復期でSTADを施行した脳梗塞例をみていきましょう。病巣は左前頭葉。
■症例の経過は良好
急性期:コミュニケーションはほとんど取れませんでした。自発性に乏しく、質問に対してはそれらしくYes/No反応があるものの、自発話は全くみられません。ADLについても協力動作がみられず全介助でした。
回復期:経過は良好。声量が乏しいものの、日常会話は充分可能となりました。ADLも、軽介助まで回復し、老健へ転院となりました。
■経過はSTADにも反映
図、左のSTADスコアにご注目下さい。発症10日、2か月、4か月と、経過に伴い正答率が上昇します。前頭葉性症状(自発性の低下など)を中心とする高次脳機能障害の改善も、全般的な回復を後押ししたと思われます。
症例の経過良好なコミュニケーション機能の回復を、STADでも確認することができました。
以上のように、回復期でも、コミュニケーション機能を測定するツールのひとつとして、STADが有効と言えます。
次に、実際に回復期でSTADを使用した、8名の言語聴覚士のアンケート結果をみていきましょう。
2.『回復期』STADの口コミやレビュー
1人目/8人 nicoさん
専従ではありませんが、回復期の患者さまにもSTADを使用しております!
(STAD申請前の悩み)学生時代から自分で作成したものを使用していました。しかし、スクリーニングでどの項目まで行うのかなど、取捨選択に迷うことが多かったです。
(回復期での使用)簡易的であるため、どの年代のセラピストでも実施することができます。評価後のまとめがあることで、申し送りの際にも使用しやすい点も魅力と感じています。
STADは使用しやすいことはもちろんですが、当法人では急性期からSTADを使用しておりますので、その時と回復期入棟時の比較することで、経過を追いやすくなっていると思います。
(STADの適応)1人職場のSTにとても心強いと思います。使用感は病院でも老健などの施設でも差はないのではないかと思います。
2人目/8人 kiki@STさん
2年ほど前からSTAD使わせていただいてます!普段STADにお世話になっているので、少しでもお役に立てたら嬉しいです😊
(悩み)STADを使い始める前は、自作のスクリーニングを使っておりました。しかし、どのくらいが重度だとかは個人の見方だったため、バラツキがあったように思います。
(STADを使ったきっかけ)恥ずかしながら、職場で使用し始めるとなってから、STADのことを知りました。上司の決定だったため、明確ではありませんが、スクリーニングの解釈を統一化するために導入したのではないかと思います。
(回復期での使用)検査用紙が一枚で、道具もそこまでたくさん必要ではありません。簡単にできるため、リハビリ初日の評価としては非常に実施しやすいです。患者さんにとっても負担は大きくなく(重症度にもよりますが)スクリーニングとして標準化されているものは評価もしやすくありがたいです。
(STADの適応)自分は回復期のみの経験しかないですが、どのような期の病院、施設でも使いやすいかと思います。経験の少ないセラピストには特に向いている検査ではないかと思います。
3人目/8人 BlackSandさん
(悩み)複数のSTで共通して使えるスクリーニング検査がなく、もしくはあっても客観性や妥当性にやや疑問がある状態でした。検査者間の手続きの違いもあり、回復期の新患評価から方針決定の情報共有がしづらい状況でした。例えば初日と翌日の評価者が異なる時の、申し送りにかかる時間増加が業務上の課題でした。
(きっかけ)学会会場でSTADを知りました。わかりやすく、根拠もある、時間もかからず実用的だと思い、導入しました。
(回復期での使用)嚥下はMASA、言語スクリーニングはSTADと、新患評価の基本業務フローができ、業務の効率化と質の均一化に繋がりました。現場での評価や方針決定、情報共有がしやすくなりました。
(STADの適応)ある程度の覚醒レベルが保たれ、検査に協力してもらえる対象者であれば、どこでも役立つのではないかと思います。組織的に評価法を統一して、業務効率化や共通データの蓄積を考えているセラピストや施設は、積極的に導入を検討して良いと思いました。
4人目/8人 井上さま
STAD使わせて頂いています。パスを作る上でも参考になりました。ありがとうございます。
(悩み)自分で作成したスクリーニング用紙を用いて、短い時間で簡便に精度の高い検査が取れないか、作っては修正していて。悩んでました。
(きっかけ)一枚の用紙で簡便に、ある程度の信頼性もあるスクリーニングとして使用出来そうだと思いました。
(回復期での使用)思った以上にスクリーニングとして使用できる印象はありました。経験の低いSTはより重宝している話は聞いています。また、急性期の申し送りと異なる結果が出たときは、掘り下げ検査を使っています。個人的な感想は、急性期から回復期の間に使うと、凄く使える印象がありました。
(STADの適応)回復期では、ある程度の簡単な重症度とかも判別できると、より使えるような気がしました。場所は急性期、亜急性期がもっとも使用出来そうな印象です。経験の少ないセラピストには良好な印象です。
5人目/8人 小島さん
とても良い物を開発していただき、ありがとうございました。当院独自のテンプレもありますが、エビデンスが出ているものを利用させて頂けるのは、非常にありがたく感じます。
(悩み)初期評価に対して当院では、嚥下を主眼に、次の日以降に各種検査を行いながら把握をしていきます。まずはその日をどうやって生活していくか?決定をしていくのですが、その際スクリーニングに割ける時間は限られます。トータル的な物が欲しかった為、STADを利用させて頂いています。
(きっかけ)ホームページをみて、簡便に大まかな状況把握と確認が行えると思い、STADを取り入れました。比較的重度症例でも意識レベルの問題さえクリアできれば、ある程度実施が可能な点も、すごく有用であると感じています。
(回復期での使用)正直、注意障害や記憶障害等には少し弱いと感じます。また、多職種に向けた環境設定や注意事項の伝達には少し弱いと感じます。しかし、回復期の特徴として、急性期からの情報提供がありますが、その確認と現状の把握には、とても良い物だと感じます。
(STADの適応)一部適応できない患者様もいらっしゃいます(気管切開患者)。指差し困難な重度症例様等は工夫が必要です。その他は、概ねどこの施設でも、情報提供の少ない場面では、有用と感じます。さらに、時間をかけられない場面、患者様の耐久性なども鑑みると、大まかな状態把握には有用です。
6人目/8人 田中さん
(悩み)セラピストが行うスクリーニングは粗雑で、統一性にかけるものでした。症状の仮定があまりできていませんでした。
(きっかけ)友人の紹介でSTADを知りました。信頼性、妥当性が担保され、他職種にも好評だったのでSTADを使い始めました。
(回復期での使用)Drがスクリーニングで行う部分と被るので、抜粋して使用しています。指の本数の模倣はかなり有効です。
(STADの適応)訪問や老人保健施設かと思います。
7人目/8人 言語聴覚士たあ/リハアプリ紹介中さん
(悩み)軽度の失語症があるのかないのかの判断が難しい。SLTAをする前にスクリーニングをしたいと思っていました。
(きっかけ)専門校時代に、ホームページで知りました。失語症のスクリーニングができると思い使い始めました。
(回復期での使用)解説には、「点数はカットオフ値ではなく、重症度の参考になる」のような書かれ方をしていたので、スクリーニングとしては使えないのかな?と感じました。
(STADの適応)回復期病院の、新人セラピストにお薦めしています。
8人目/8人 Mt ysoさま
回復期に勤務しています。日頃STADに助けていただいていますので、僅かながら協力させていただきます!
(悩み)スクリーニング内容や分量(難易度や患者負担)、如何では、拾い上げるべきものをスルーしてしまったり、逆に、負担を掛けすぎて偽陽性のような結果を招くことも想定されます。
(きっかけ)勤務先で既に使用されており、先輩に紹介いただきました。
(回復期での使用)主に以下の点で有効性を感じます。
- 実施が簡便かつ容易で患者の負担も少ない
- 統計的な根拠に基づき、失語症の有無や重症度の見当が付きやすく、以降のアセスメントの流れが想定しやすい
- 他の高次脳機能障害についても検討できる
- 各領域の勾配が点数により記載でき、多職種に情報が提供しやすい
(STADの適応)私も含めて、経験の浅いセラピストは大いに助かると感じました。色々な要素を想定しようとすればするほど項目を絞り込めず、患者負担の少ないものにパッケージすることは大変な作業だと思いますので。
施設については、リハビリを提供するのであれば、どこでも有効だと感じます。急性期では意識障害などで実施できないケースもあるかと思いますが、後々経過を辿る意味でも記録として残す意義はあるかと思います。
皆様、貴重なご意見を頂き、本当に有難うございました。
まとめ
回復期にてSTADを使ったことのある言語聴覚士へのアンケートから、以下のことが分かりました。
- 自分で作成したスクリーニングが大丈夫かな?と不安を感じる言語聴覚士が多い。
- STADを知るのは、書籍、インターネットを通してか、既に職場で用いられていることが多い。
- 回復期での利用は概ね問題なし。
- STADはスクリーニングならではの利便性があり、適応範囲は広い。とりわけ経験年数の浅い言語聴覚士に有効。
*STADはあくまで10分の短時間で行うスクリーニングです。確定診断をもたらすものではありませんので、予めご了承ください。
他の検査でも、回復期だから使えない、
というものはありませんよね。
例えば、MMSE、HDS-R、TMTなどの
スクリーニング検査も
回復期で問題なく用いられます。
STADも同様に、回復期だから使えない、
という理由は見つかり難いです。
その点は安心してSTAD導入ご検討下さい。
それでも導入を迷う言語聴覚士は
コチラもご参照下さい↓
言語障害スクリーニングテスト STAD 導入の前に知たい特徴
最後に、ここまで読んでいただき、
本当にありがとうございました。
STAD公式ホームページ ‐ 言語障害スクリーニングテスト(STAD)
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